洋菓子店にとって、苺のショートケーキはいちばん基本で、いちばんごまかしのきかないお菓子です。スポンジ、クリーム、苺という数少ない要素だけで組み立てるため、素材と技術がそのまま味に出ます。

スポンジは「支える」もの

ふんわりしているだけでは、クリームと果汁を受け止めきれません。きめ細かく、しっとりとしていて、それでいて崩れない。フォークを入れたときにすっと切れる生地こそが、良いショートケーキの土台になります。

クリームは温度が命

生クリームは泡立てすぎるとぼそつき、足りなければだれてしまいます。しかもその境目は、その日の気温や湿度で少しずつ動きます。毎日同じ状態に仕上げるというのは、じつは職人の仕事のなかでも神経を使う部分です。

苺は「主役」であり「季節」

甘みと酸味のバランス、香り、そして果肉のしっかりした食感。苺は品種と時期で表情が変わるため、その時々でいちばん良いものを選びます。同じショートケーキでも季節によって印象が変わるのは、そのためです。

シンプルなお菓子ほど、作り手の考え方が正直に出ます。お店を選ぶときは、まずショートケーキを一つ召し上がってみてください。